だいせつざん ~かむいみんたら~
No.9大雪山 〜カムイミンタラ〜
360度広がる大パノラマ。万年消えることのない大雪渓。断崖絶壁から落ちる優雅な滝。天空に広がる湖。百花絢爛と咲きほこる高山植物。ここにしか生息しない美しい高山蝶。一面に広がり燃えるような紅葉。そこで神様が舞い踊ります。
アイヌの人々は、その美しい大雪山をカムイミンタラ(神々が遊ぶ庭)と呼び、崇敬と畏敬の対象としました。
石狩川が向かう場所です。
国指定(一部)特別記念物
構成要素
(1)旭岳
上川アイヌが「ヌタㇷ゚カムイシㇼ」または、「ヌタㇷ゚カウㇱペ(広い湿地の上につくもの)」と呼んでいた崇敬と畏敬の対象としていたのが大雪山です。中でも神秘的な山容や高山植物の大群落などは「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と言われていました。標高2,291メートルを誇る最高峰・旭岳麓の温泉街では、毎年、ヌプリコㇿカムイノミと呼ばれるアイヌの祭事を通して、登山者、観光客の安全を祈念しています。明治大正時代に活躍した文士・大町桂月は、登山路の無いなか縦走に挑み、大雪山の存在を紀行文で世に知らしめました。
国指定一部特別天然記念物
(2)羽衣の滝
北海道一の落差270メートルを誇り、切り立つ崖を7段に屈折しながら落下する水の流れの美しさが、天女の羽衣に例えられ、北海道指定名勝に指定されています。周囲の木々が色づく秋は、滝と紅葉が一度に楽しめ観光客が多く訪れます。動物文学の第一人者・戸川幸夫が執筆した「牙王物語」は、羽衣の滝や大雪山、旧東川村を舞台に人と動物との絆を描いており、単行本や児童書は、現在も感動の名作として受け継がれています。
道指定名勝
(3)天人峡
旭岳の東側に位置し、約3万年前の大雪山噴火がきっかけで生じた柱状節理(溶岩が冷え固まる時にできる割れ目)の絶壁に囲まれた峡谷です。良質な温泉がこんこんと湧くことから、湯治場としても長く愛されてきました。大雪山縦走の紀行文を執筆した山と旅の文士・大町桂月は、縦走の際ここ(旧松山温泉)にも立ち寄り、「富士山に登って、山岳の高さを語れ。大雪山に登って、山岳の大さを語れ」という四行詩(漢詩)を遺しています。
(4)層雲峡
北海道中央部、大雪山の北麓に石狩川がつくった24キロメートルにわたる大峡谷。アイヌ語「ソ・ウン・ベッ」(滝のある川)を1921年に来遊した文人・大町桂月が層雲峡の字を当てて紹介。凝灰岩が浸食されて高さ100メートル以上の岩壁をなし、垂直に柱状節理(溶岩が冷え固まる時にできる割れ目)が発達しています。大函や銀河・流星の滝などの渓谷美で知られ、石狩川と支流の赤石川、黒岳沢との合流点付近に層雲峡温泉が湧出して、大雪山観光の基地として利用されています。
(5)銀河・流星の滝
大雪山の麓に広がる渓谷・層雲峡では、天高くそびえる柱状節理(溶岩が冷え固まる時にできる割れ目)の断崖絶壁が約15キロメートル連なり、ほぼ垂直に切り立つ崖から流れ落ちる大小さまざまな滝を見ることができます。中でもこの2本の滝は名瀑として知られ、並んでいる様子から夫婦滝とも呼ばれています。高さは「銀河の滝」が120メートル、「流星の滝」が90メートル。展望台「双瀑台」から一緒に見ることができます。
(6)黒岳
四季折々の美しさを見せる北海道の屋根・大雪山連峰を上川アイヌの人々は、「ヌタㇷ゚カウㇱペ(広い湿地の上につくもの)」や「カムイミンタㇻ(神々の遊ぶ庭)」と崇め敬っていました。大雪山縦走コースの北端に位置する標高1984メートルの黒岳は5合目まではロープウェイ、7合目まではリフトで登ることができます。そこからの登山道では多くの高山植物が花を咲かせ、山頂では夏でも残雪が残る大雪の山々を眺望します。
国指定特別天然記念物
(7)大雪高原沼
大雪山連峰の最高峰・旭岳の裏側に広がる秘境の高原で、大小さまざまの沼が点在しています。針葉樹と広葉樹の混交林に覆われ、毎年9月中旬から10月上旬には息を呑むほどに美しい紅葉を見せてくれます。ヒグマの生息域ですので「ヒグマ情報センター」から出発する沼めぐりコース登山は、入山前にコース利用のレクチャーを受ける必要があります。北海道で最も高地にあるといわれる大雪高原沼温泉も湧いています。
(8)大函
層雲峡を代表する景勝地のひとつです。「函」とは川の両岸が切り立って箱のようになった地形のことをいい、アイヌ語ではシュオㇷ゚・ニセイ(函の・絶壁)といいます。石狩川の川幅を狭めるよう両岸にそそり立つのは、柱状節理の断崖絶壁です。柱状節理とは、約3万年前の大雪山のお鉢平の噴火で流れてきた溶岩が、冷却する時に収縮してできる規則的な割れ目のこと。上から見ると六角柱が連なっているように見えるそうです。
(9)原始ヶ原
十勝岳連峰の最南に位置する富良野岳。その標高1,000から1,300メートル地点に広がる中・高層湿原が「原始ケ原」です。総面積は115ヘクタールにも及び、大雪山国立公園特別保護地区に指定されています。富良野岳山頂を目指す富良野市側からの登山ルートを歩くと、ここを通過することができます。その昔は、上川と十勝のアイヌが行き来する経路であり、幕末の探検家「松浦武四郎」がこの地を通っています。
(10)十勝岳
北海道中央部、大雪山国立公園の南部に位置している十勝岳連峰は、標高2077メートルの十勝岳を主峰に、美しい連なりを形成しています。現在も火山活動が続き、活火山ならではのダイナミックな景観が楽しめます。十勝岳温泉の登山口から、上富良野岳、上ホロカメットク山を縦走し十勝岳山頂を目指すことができ、頂上からは周辺の山々の姿や、裾野に広がる町の大パノラマを眺めることができます。
国指定特別天然記念物
(11)然別湖(ミヤベイワナの生息地)
然別湖に生息するオショロコマは、ミヤベイワナといわれ、北海道の河川に広く分布する他のオショロコマとは異なる特長をもっています。湖のなかでより多くのプランクトンを食べるため、他のものより「サイハ」とよばれる器官の数が多いことが、もっとも大きな特長です。湖を海に見立て、然別湖に流入するヤンベツ川を溯上して産卵し、川から湖に下り成長します。からだには美しいピンクやオレンジの斑点を持ち、成熟体長は25から30センチメートル、過去には50センチメートルを超えるものも生息していました。現在は、北岸水域とそこに流入する河川が生息地として北海道天然記念物に指定されています。
(12)三国峠の大樹海
北海道の国道では最も高い標高1,139メートルの三国峠から見下ろす大樹海は、約100万年前の大噴火で形成されたカルデラです。東大雪の山々に囲まれたその地には現在、針葉樹と広葉樹の混交林が広がり、美しい景観をつくっています。かつて中心地には、旧国鉄士幌線の終着駅と集落がありました。木材の積み出し基地として栄え、1960年(昭和35年)には2000人を超える人々が暮らしていたといいます。
(13)五色ヶ原
大雪山の秘境中の秘境と呼ばれる五色ヶ原は、標高差350メートルの傾斜をもって横たわる広大な高原と、主に雪田植物といわれる高山植物が一面に咲き華麗なお花畑や、トムラウシ山を間近で見られ素晴らしい景観が広がります。五色ヶ原へは沼の平登山道から急坂を登り、雄大な湿原の沼ノ原の地塘をぬいながらすすみ、針葉樹を抜けて登ると、やがて広い平坦地になり大雪山の広がりを感じられます。トムラウシ山方面、忠別岳・白雲岳方面への縦走路となっています。
国指定特別記念物
(14)ヌプカの里
標高600メートル地点に広がる「士幌高原ヌプカの里」は、日高山脈や十勝平野を見渡す景観のよい高原です。大雪山国立公園内に位置し、天然保護区域として、1977年に特別天然記念物として指定されました。「ヌㇷ゚カ」とは、アイヌ語で「原野」という意味で、山域にはさまざまな高山植物が自生し、野生動物も数多く生息しています。現在は、キャンプサイトや展望台を有する自然豊かな高原公園として、多くの人々に利用されています。