大雪山国立公園をより楽しむためのスポット-前編- 「層雲峡ビジターセンター」(上川町)

大雪山国立公園は旭岳(2291メートル)や黒岳(1984メートル)、十勝岳、トムラウシ山などの山々が連なる日本最大の国立公園です。一市九町にまたがり、総面積はなんと23万ヘクタール!上川アイヌはこの美しくも壮大な地をカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼び、崇拝と畏怖の対象としてきました。
そんな大雪山を知り、学び、楽しむための拠点となるのが「層雲峡ビジターセンター」(上川町)と「旭岳ビジターセンター」(東川町)です。事故を未然に防ぎ安全に遊ぶためにも、ぜひ立ち寄りたい場所です。

高山植物が多く広大で高原状
多くの人が魅せられる美しい山々

「層雲峡ビジターセンター」があるのは、上川町の黒岳ロープウェイ層雲峡駅から徒歩すぐの場所です。

ビジターセンター
(写真提供/層雲峡ビジターセンター)

エントランスを抜けて館内に入ると、スタッフが丁寧に手書きした登山道の状況や天候といった登山情報が目に入り、人の温もりが感じられてホッとします。
一方で奥の部屋には、2021年春に設置されたVR(バーチャルリアリティ)体験システムが!バーチャルトレッキングやスカイウォークなど13のコンテンツが用意されており、体の動きを察知するセンサーのおかげで、どこにも何にも触れずに操作が可能です。
実際にVRゴーグルを装着すると、大雪山国立公園の美しい映像が目の前いっぱいに広がり、まるでその場にいるような臨場感溢れる疑似体験が楽しめます。 

「上川アイヌの人々が敬った黒岳や旭岳の美しさに、今も人は魅せられていますよね。原始山岳環境が残る表大雪(黒岳、旭岳)は、お鉢平などと呼ばれる広大な高原状になっており、この美しい景色の中を歩いて、北鎮岳や中岳といったいくつかの山を縦走することもできるんですよ。黒岳で90種、旭岳で40種と自生する高山植物の種類も多く、まさに神々が遊ぶ庭のようです。また大雪山の登山口は31カ所あるのですが、どこから下山しても温泉が楽しめる。とてもいい環境ですよね」。

片山副館長のお写真
片山副館長

そう話してくれたのは、副館長の片山徹さんです。

大雪山国立公園の山々の多くは標高2000メートル前後ですが、いずれも高山環境のため、本州だと3000メートル級の山でないと見られない植物も自生しているのだとも教えてくれました。

自然観察プログラムを通じて
アイヌ文化や大雪山を知る

同センターでは四季を通して、さまざまな自然観察プログラムを実施しています。※現在は新型コロナウイルス感染防止の観点から中止しているプログラムもあります。
中でも月例で開催している「季節の観察会」は、地形や生態、温泉などを通して、道内各地の自然環境の違いを学ぶ内容です。
日本遺産の拠点である二市十町を含む広範囲なエリアをフィールドとし、富良野市や上士幌町まで足を伸ばすこともあります。

また、ここ層雲峡は、国道から垂直に切り立った崖(柱状節理)や、崖を伝い流れる大小さまざまな滝が見られるビュースポット。この野性味溢れる自然環境を観察するプログラムも多彩にそろっています。

「私たちは知的好奇心から大雪山国立公園の自然や動植物についてを学びますが、上川アイヌにとってこれらの情報は、生きるために必要なことでした。例えば山には熊がいますから、熊の生態をわかっていないと命が危ないんですよね。自然や動植物をよく観察し、理解することが、危険を避けることにつながっていたのです。観察会を通して、こうした上川アイヌの生活や大雪山の山々に興味を持ってもらえたらうれしいですね」と片山さん。

また層雲峡にはアイヌ語由来の名称が多く残っており、例えばニセイチャロマップ川、ニセイカウシュッペ山などに付くニセイとは崖、断崖という意味です。

渓谷の入り口にはソウウンペッ(滝の多い川)という川があり、これが層雲峡という地名の語源といわれているとか。

名称も上川アイヌを知るきっかけになりますね。

自然観察プログラムの申し込み方法

  • 公式HPで内容を確認の上、電話で前日までの申し込み。

施設データ

  • 層雲峡ビジターセンター
    http://sounkyovc.net
    上川郡上川町層雲峡
    電話:01658-9-4400
    開館時間:8時~17時30分(11月~5月は9時~17時)
    休館日:無休(11月~5月は月曜)、12月31日~1月5日