大雪山国立公園をより楽しむためのスポット-後編- 「旭岳ビジターセンター」(東川町)
大雪山国立公園は旭岳(2291メートル)や黒岳(1984メートル)、十勝岳、トムラウシ山などの山々が連なる日本最大の国立公園です。一市九町にまたがり、総面積はなんと23万ヘクタール!上川アイヌはこの美しくも壮大な地をカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼び、崇拝と畏怖の対象としてきました。
そんな大雪山を知り、学び、楽しむための拠点となるのが「層雲峡ビジターセンター」(上川町)と「旭岳ビジターセンター」(東川町)です。事故を未然に防ぎ安全に遊ぶためにも、ぜひ立ち寄りたい場所です。
大雪山と上川アイヌをテーマにした
フォーラムを毎年開催
北海道の最高峰・旭岳の麓に広がる東川町の旭岳温泉で、令和元年に移転オープンした「旭岳ビジターセンター」。以前の場所よりもロープウェイの旭岳山麓駅に近くなりました。
「大雪山の山々はいいですね。私は富士山に複数回登った経験があり、また北アルプスの主要な山々を登山したこともありますが、大雪山には、それらの山とはまた違った魅力を感じています。高さはないけれどダイナミックで広大ですし、天候に恵まれれば登りやすく、はっきりとした四季の移り変わりを見せてくれます。縦走路も含めて、本州の山にはない魅力がありますね」。
そう話すのは、同センター所長であり、東川町大雪山国立公園保護協会事務局長の三島光博さんです。
同センターでは、リアルタイムで山の天気や高山植物の開花状況といった自然情報を案内するほか、温泉や産品といった町の魅力も幅広く発信しています。
エコツーリズムの拠点としての役割も担っており、建物周辺や旭岳五合目の姿見の池(ロープウェイで行けます)を自然観察しながら散策するツアーでは、スタッフがガイド役を務めています。
またスタッフがコーディネートするフォーラムも年数回開催。近年は上川アイヌと大雪山をテーマにした内容を多くしており、大自然との向き合い方や自然に対する畏怖畏敬の念について教えてもらえます。
例えば2021年10月に開催されたのは「大雪山を快適で楽しく利用するためのフォーラム」でした。大雪山のトイレ事情や携帯トイレの使い方、野生動植物とのつきあい方、上川アイヌの文化について、専門家のわかりやすい話や映像を通してレクチャーしてくれる内容です。
この企画を担当したのは、北海道に憧れて移住してきたという韓国・ソウル市出身の宋東憲(ソン ドンホン)さん。
「旭岳の自然の豊かさ、多様性に感動させられています。また上川アイヌの自然との共生の考え方は、とても勉強になります。彼らの文化と大雪山の持つ素晴らしい価値を、国内外の多文化多世代の方々に、今後どのように発信していくのかが今の課題です」と話します。
旭岳を守り未来につなげていくには
上川アイヌに学ぶ自然観、山との向き合い方
近年、課題とされているのが、私たち利用者の山とのつきあい方です。
実は本州の有名な山々では身近に管理人がおり、登山の際のルールも厳しめです。しかし大雪山は管理人がおらず、広大であるがゆえに、迅速に対処してもらえるだけの管理が十分とは言えず、自然や生態系の破壊に直結する恐れがあります。
三島さんは、大切な旭岳を守り未来につなげていくには、「○○はいいが、○○をしてはいけない」などといった具体的なルールを設けるだけではなく、快適に安全に利用するための心構え、考え方が必要であり、それらは「上川アイヌ文化から学べることが多い」と話します。
「利用者が、自然を尊ぶと同時に恐れを抱くなど畏怖畏敬の念を持っていれば、『山でゴミを捨てない』『携帯トイレを持参する』『禁止区域には足を入れない』『危険を感じたら引き返す』…などといったことを、自ずと考えていけるようになると思うんです。上川アイヌ文化の存在は日本遺産の認定に欠かせないものであり、大雪山に向き合う全ての方々にとって大変有意義なことだと思っています。自然と共生してきた彼らの考え方や知恵を学び、大雪山を満喫することで、より深く思いをはせていただきたいですね」
施設データ
- 旭岳ビジターセンター
https://www.asahidake-vc-2291.jp
上川郡東川町旭岳温泉
電話:0166-97-2153
開館時間:9時~17時
休館日:年末年始