上川大雪酒造「緑丘蔵(りょっきゅうぐら)」(上川町)/杜氏 川端慎治さん(1)

上川大雪酒造「緑丘蔵」 杜氏 川端慎治さんに、話を伺いました。

杜氏プロフィール

川端慎治(かわばたしんじ)

1969年、北海道小樽市生まれ。石川県や福岡県など5県の酒蔵で経験を積み北海道に帰郷。杜氏を務めた金滴酒造株式会社で北海道産酒造好適米「吟風(ぎんぷう)」100パーセントの酒を造り、2011年の全国新酒鑑評会で金賞受賞。その後16年に上川大雪酒造『緑丘蔵』杜氏に就任。現在は20年10月より醸造開始の姉妹蔵『碧雲(へきうん)蔵』も統括する上川大雪酒造総杜氏を務め、国立帯広畜産大学客員教授も兼任。

北海道の酒米で造る「飲まさる」酒

川端さん
川端さん

「上川大雪酒造『緑丘蔵』」は、お隣の愛別町産など、北海道で栽培する酒造好適米「吟風(ぎんぷう)」「彗星(すいせい)」「きたしずく」を使った酒造りをしている小さな酒蔵です。機械を用いず、全ての工程を人の手で行っています。

一回の仕込みに使う酒米の量は、一般的な酒造りに比べるとかなり少ない600キログラム台。10キログラムずつ洗米、吸水を繰り返すなど、まるで新酒鑑評会に出品する酒のように丁寧に小仕込みしています。

蒸し上げた酒米に麹菌を振り掛ける川端さん(写真提供:上川大雪酒造)

仕込み水は大雪山系の雪解け水が地中に浸透した天然水です。超軟水で、とにかく良い水なんですよ。日本酒の成分のほとんどは水ですから、水で味が決まるといっても過言ではありません。この水は、その重要性を再認識させてくれましたね。

「上川大雪」のレギュラー商品。左から純米大吟醸35パーセント、特別純米、純米大吟醸、純米吟醸(写真提供:上川大雪酒造)

蔵として決めていたのは、流行や派手さを求めない「普通の酒」、「飲まさる酒」(※北海道弁でつい飲んでしまうという意味)を造ろうということ。

以前、町内の商店で、地元のおばあちゃんが「日本酒は初めて飲んだけど、飲みやすくておいしいね」って声をかけてくださったことがあったんですが、まさにそういうことなんですよ、目指しているのは。

アルコール臭を感じさせず、キレがよくてグビグビ飲めて、誰でもおいしく、飲めなかった人も飲める味。これ、ありそうでない味わいだと思うんです。良質な水と北海道の酒米だからこそ、実現出来るのではないでしょうか。

(川端さん談)