上川町「北の森ガーデン」内「伊澤民芸」の木彫りのフクロウは、作り手の心が投影されているかのようなやさしい表情をしており癒しがあります。制作者は上川アイヌ協会会長の伊澤修一さん。木彫りやアイヌについて話を聞きました。前後編でお届けします。
言い伝えは守っている
前回、アイヌは臨機応変だって話をしたけれど、伝承は大事にしていますよ。
上川アイヌに伝わる「すべての生きとし生けるものにカムイが宿っている」という教えはしっかり残っているし、私個人としては、親父がしてはダメだと言ったことは今でもしていない。
言い伝えにはちゃんと意味があって、先人の知恵が含まれていることが多いのでね。
例えばチセ(家)を作る時に、「木の向きを守る」ということ。「根と根、先と先をくっつけるな」「根元は下、先は上」と言われていたので、木の上下をしっかり確認してから使います。
日本の大工さんも同じみたいだね。やっぱり意味があるんだよね。ちなみにアイヌの中では、そうしないと「先がなく縁起が良くない」といういわれがあるんですよ。
ここに買い物に来てくれるお客さんとは、チセで一緒に座って話しをすることもあります。いろいろアイヌの話を聞きたい、という人は結構いるもので。
チセは、長持ちさせるために毎日囲炉裏で薪をたいて室内をいぶしていますので、大体いつでも入れるようになっています。もちろん入室無料です。
私たちはアイヌという民族だけれど、皆さんと同じ時代に同じように生きている日本人なので、上からでも下からでもなく対等に話しをして欲しいし、そうしてくれる人が好きです。
「今、アイヌって何人いるの?」とかさまざまなことを聞かれるので、わからないことは「わからん」っていうし、答えられることは包み隠さず伝えています。
(聞き手/ライター孫田二規子)