上川町「北の森ガーデン」内「伊澤民芸」の木彫りのフクロウは、作り手の心が投影されているかのような優しい表情をしており癒しがあります。制作者は上川アイヌ協会の伊澤修一さん。木彫りや上川アイヌについて話を聞きました。前後編でお届けします。
「見て覚えた」木彫りの技術
木彫りは親父が彫っていたのを見て覚えました。アイヌにとってこうした技術は「見て覚える」ものなんです。私もそうで、17、8歳の頃には親父の背中を追うように彫刻を始めていましたね。
生活道具や販売用の作品は誰でも作れますが、イナウなどの神具や儀式で使うイクパスィなどの道具は別です。神聖なものなので、習った人から許可を得るまで作ることができません。
でも私の場合は、許可をもらう前に親父が亡くなってしまって。周囲の人間は「もう作っていいんじゃない」と言うし、私もそう思うのだけど、なんとなく今でも作れないでいます。
木彫り熊の開祖といわれる松井梅太郎氏の最後の弟子だった親父は、主に熊を彫って売っていましたが、私は他の人が作っていないものがよくて、ペンダントやフクロウの置物を彫っていました。
今はフクロウが中心です。熊は山の神さまですが、フクロウは全体の神さま。世界を見ても、フクロウが神さまだという地域はわりとあるので、熊より格は上かな、なんて思っているよ(笑)
目を黒く入れているのは、他の作家のフクロウと差を付けるため。アイヌは臨機応変でね。時代に合わせて変化することができるし、新しいアイデアを出すことや、他の人がやっていないことをするのが好きなんです。
フクロウに使う木はエンジュなどいろいろ。木目や色調を生かしながら、彫刻刀を使って掘り出していきます。
彫刻には人間が出るよね。私も怒っていたり心が波立っていたりする時には、なんだか上手に彫れないものです。
お客さんは私の作品を「かわいい」と褒めてくれることが多いけれど、昔から強面(こわもて)と言われてきた私としては、自分には似合わない言葉だな、と少し気恥ずかしく感じています。
(聞き手/ライター孫田二規子)