上川アイヌの心に学ぶ旅(2日目)

14組の親子がカムイの世界に触れた2日間

夜が明けて2日目、10月13日。午前8時半、ホテルを後にした一行が向かうのは、黒岳7合目カムイの森のみち……だったはずなのですが、なんとこの日は大きな台風が接近中。急きょ予定を変更して、層雲峡ビジターセンターへ向かうことになりました。

大雪山系が何万年という歴史の中でどう変化していったのか、ジオラマを前に説明を受けます。

次に訪れたのは、すぐ近くにある層雲峡大雪山写真ミュージアム。

ラッキーなことに、この日は市根井館長が在館していて、いろいろお話を聞くことができました。市根井さんは、なんと60年にわたって大雪山の写真を撮り続けているという、熟練のカメラマンです。

ミュージアムの後は、大函や、流星の滝と銀河の滝など層雲峡を代表する景観を見学して回ります。特に大函では柱状節理などの説明があり、先ほど層雲峡ビジターセンターで学んだことが、よりリアルに感じられます。

台風の影響か、ポツポツと雨も降り始めました。次の目的地へ急ぎます。向かったのは……みんな大好き、旭川市旭山動物園!

天気はカラッと快晴に。ツアー参加者に、誰か強運の持ち主がいるようです。お昼ごはんを食べた後、ここでのお目当て、シマフクロウの元へと向かいます。

実はシマフクロウは、アイヌと関わりの深い動物。アイヌ語では「村を守る神」という意味のコタンコㇿカムイと呼ばれてきました。「今は絶滅の危機に面していて、自然界にはもう165羽しか棲息していません」と、飼育員の佐賀さんが解説してくれます。大切な自然を守り、どう受け継いでいけば良いのか?
改めて考えさせられます。

さて、この旅もそろそろ終わりに近づいてきました。最後の目的地は、旭川市博物館です。

平成5年に開館したこの博物館は、平成20年11月にアイヌ文化の紹介を中心とした展示にリニューアルされました。アイヌの人々の生活を、視覚的に分かりやすく学ぶことができます。

ここで登場してくれたのが、1日目にもお世話になった同委員会の友田さん。

友田さんの解説を受けて、展示されている衣装や道具類を見ていくと、神々と共に生きていたアイヌの人々の神秘にも触れられるような気がするから不思議です。

長く濃い時間を紡いできたこの旅も、ここで終わりです。学校では習わない様々な学びや体験を通して、上川アイヌの人々の暮らしかたや物の見かたが、より身近に感じられたのではないでしょうか。この地域に息づくかけがえのないものに改めて目を向ける機会となりました。最後に、常に積極的に行動していた姿が印象的だった千葉さん親子にお話を聞きました。

「アイヌについて、3年生か4年生頃からすごく興味があったので、参加しました」と娘さんが言えば、「同じような企画があったら、また参加したいね」とお母さん。参加した親子みんな、最後は本当に満足そうに、生き生きとした表情で帰っていきました。私たちが生きていくうえで大切なことへの気づきや、これからの暮らしかたへのヒントに出会えたこの2日間の体験の数々は、きっと忘れられない思い出となったことでしょう。

参考資料

知る・見る・感じるカムイの世界 上川アイヌとこころ揺らす旅「旅のしおり」